仏教語から出た日常語・ことわざ(31)       シリーズ(213)

般若(はんにゃ)般若の面

皆さんのなかには「般若」と聞くと、恐ろしい形相をして角のある鬼女の面を思い出す方が多いのではないでしょうか。

仏教では「般若」とは、真実を認識し、さとりを開く「最高の智慧(ちえ)」のことをいいます。この般若という言葉は、パーリ語のパンニャー、サンスクリット語のブラジュニャーを音写したものといわれています。私たちが正しい世界観や人生観を得て、さとりへ近づき、さとりを得るためには智慧が必要なので、智慧を完成させることが大変に重視されました。それゆえに仏教では菩薩が実践すべき六つの修行徳目である六波羅蜜(布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧)の最後の締めくくりとしてしめされています。大般若経、般若心経というお経の名前を聞かれたことがあると存じます。般若波羅蜜(最高の智慧をもって理想の世界へ到達すること)を説いた経典です。その心髄を簡潔に説いたのが般若心経で、二百六十二字とわりと短いこともあり多くの人に親しまれています。

ところで最初に書いた「般若の面」ですが、詳しいことはわからないのですが、これは奈良の面打ちの般若坊という人が、女性の嫉妬・悲しみ・苦しみ・怒りを表現した面を作ったことにちなんで、そのようにいわれるようになったということです。

般若湯(はんにゃとう)というのはお酒のことです。出家者は飲酒が禁じられていましたが、適量のお酒は頭脳を明晰にすると言われる所から、般若湯という隠語を用いるという知恵を働かせたようです。自分の適量はどの程度か、知恵を働かせて知りたいものです。

   参考文献 「仏教日常辞典」太陽出版

     「広辞苑」   岩波書店

     「大法輪第72巻、第2号」 

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