仏教語から出た日常語・ことわざ(30)       シリーズ(212)

莫迦(ばか)

 「莫迦」は、愚痴(ぐち)・無知という意味の梵語mohaモーハを音写したものと考えられています。その意味は、@おろかなこと。社会的常識に欠けていること。用例⇒専門莫迦 A取るに足りないつまらないこと。無益なこと。とんでもないこと。用例⇒莫迦なことをしたものだ B役に立たないこと。用例⇒ねじが莫迦になる C度はずれて。用例⇒莫迦ていねい・莫迦陽気、ということです。あほうやたわけと同義の言葉です。

「莫迦」はよく「馬鹿」と書かれますが、これは当て字です。馬や鹿にとっては大変に迷惑な話といわざるをえません。

「莫迦」を使ったことわざには、莫迦にする=あなどる、人や事柄を軽んじる。莫迦にならない=一見、たやすそうに見えるが、無視したり軽視したりできない。莫迦になる=@自分の意思を抑えてがまんする。A本来の機能が失われ、役に立たなくなる。莫迦を見る=つまらない目にあう、損をする。莫迦の一つ覚え=一つの事だけをおぼえて、それをどんな場合でも得意になってふりまわすことをあざけっていう言葉。莫迦も休み休み言え=相手の言ったつまらない事、いいかげんな事をたしなめていう言葉。莫迦に付ける薬は無い=莫迦を治す方法は無い。莫迦と鋏(はさみ)は使いよう=切れない鋏でも使いようによっては切れるように、莫迦でも使いようによっては役に立つということ。等など色いろあります。

最近の世の中には「正直者が莫迦を見る」という事例が多すぎます。正直に生きている善男善女が報われる社会に向かって、少しずつ少しずつ努力してまいりたいものです。

   参考文献 「仏教日常辞典」太陽出版

     「広辞苑」   岩波書店

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