仏教語から出た日常語・ことわざ(27) シリーズ(209)
念(ねん)には念を入れよ
「念を入れる」とは、十分に注意をすること・心を込めて丁寧にすること・手数をかけて落ち度が無いようにすることで、まさにものごとを入念にすることをいいます。それをさらに「念には念を入れよ」となりますと、もう一つ強めて、さらに細心の注意・綿密な注意を要請し、強要することになります。気をつける上にも気をつけることを促す、さらには気をつけることを強(し)いるということです。
広辞苑で「念」をひきますと、おもい・考え・気持ち、気をつけること・注意すること、深く望むこと・深く思うこと、等の他に、仏教語として「経験を明瞭に記憶して忘れない心の作用・憶(おく)・憶念=深く心中に銘記して忘れぬ考え」と説明があります。このように仏教では、きわめて大切な概念なのです。
念を入れておいたつもりでも、ちょっとした物忘れをしてしまうこともありますが、ここ一番、絶対に失敗の許されないときには、手抜かり・気抜かりをしないように、十分の上にも十分の念を重ねることが重要です。そのためには自分なりに色いろと工夫をしてみることが大切です。
「念」の入る言葉には、念が晴れる(思い残す所がなくなる)、念が残る(思い切ることができない)、念を押す(間違いがないよう、相手に十分に確かめる)、念の過ぐるは無念(念を入れすぎると、かえって注意の行き届かないのと同じことになる)などがあります。
参考文献 「大法輪第72巻2号」大法輪閣
「広辞苑」 岩波書店 ご感想をお聞かせください。薄謝進呈