仏教語から出た日常語・ことわざ(23)       シリーズ(202)

つっけんどん・無頓着(むとんちゃく)

「つっけんどん」は漢字で書くと「突慳貪」となります。突には突然・突発というように、にわかに、だしぬけにという意味があります。慳貪の慳はけち、しみったれという意味があります。貪は三毒という、良い行いを毒する三つの煩悩=貪(とん・むさぼりの心)・瞋(しん・いかりのこころ)・痴(ち・おろかな心)の一つです。それで慳貪は、物を惜しむ心が強く、むさぼり求めて飽くことを知らないことという意味になり、なさけ心のないこと、愛想のないことという意味もあります。「つっけんどん」は意味も無く突然に物惜しみをし、ぶっきらぼうで不親切な態度をとったり、とげとげしい言い方をすることをいいます。反対語として「不慳貪」があり、謙虚にして自己を抑制し、物惜しみが無いことを言います。

「無頓着」の頓着は仏教語の貪着(とんじゃく)から変化したものです。貪着の本来の意味は、足ることを知らず、物に執着(しゅうじゃく)すること、むさぼりつくこと、一般的には深く心にかけること、気にすることという意味です。それで無頓着は、物事を気にかけないこと、平気なこととなります。「衣食に無頓着」というと、着るもの食べるものに全く関心がないか、あるいはそれにかけるお金に関心がないとも受け取られます。

ところが、この「無頓着」は、仏教においては最高の賛辞の言葉ともいえます。無頓着の本来の意味は、貪=頓すなわちむさぼることに執着が無い、無欲であるということなのです。お金でも物でも足るを知って、ほどほどのところで執着を解かないと、どこまで行っても満足は無い、幸せは無いということなのです。

参考文献「大法輪平成17年第2」大法輪閣

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